「心理的ストレス反応」と「トラウマ反応」の関係

心理的ストレス反応

心理的ストレス反応は、出来事に対する他者や当事者の客観的判断によるものではなく、当事者の主観的な認識によるストレス反応です。

心理的ストレス反応の感じ方は、その出来事に対して、当事者が主観的にどの程度の困難や脅威を感じるかによって変わってきます。

本人が、主観的に次のように認識できれば、その出来事に困難を感じて、ストレスを感じていても、それを解決のためエネルギーとして糧にすることもできます。

  • 自分でも対処できる(ある程度、状況を把握することができて見通しがつく)。
  • 他者に相談して対処できる。
  • 他者に助けや協力を求めることができる。
  • そこに、やりがいや意味を見いだせる。

そして、不安や怖れを感じても、出来事に圧倒されて完全に押し潰されることなく、自分のリソースを駆使して、実際にその出来事に対処・対応していくことがきます。

一方、本人が主観的に圧倒されて主観的に次のように認識すると、不安や怖れが大きくなって、自分だけでは対処・対応できなくなります。

  • 自分には対処できない(状況を把握することができない。把握できても見通しをつけることができず、この先どうなるかわからない)。
  • 誰にも言えない。誰にも相談できない。
  • 誰の助けも協力も求められない。
  • そこに、やりがいや意味を見いだすことができない。

上記の一つでも当てはまると、対処できないというストレスがつのっていきます。

そして、当てはまるものが多くなるほど、怒りやすくなったり(キレる)、衝動的、批判的、強迫的になったり、うつ状態になり、他者の協力や助けを受け入れていかないと、解決困難な問題となっていきます。

状況や対処方法によっては、うつ病や適応障害などの病気になる確率が高まります。

トラウマ反応

さらに、その出来事が当事者にとって心理的・身体的な危険や生命の危機を伴う体験、心を強烈に掻き乱すような体験であれば、危機的な出来事に対する身を守るための「闘う・逃げる・固まる」という強度の身体的ストレス反応を伴うトラウマティックストレス反応(トラウマ反応)をもたらします。

「トラウマ反応」をもたらす体験を「トラウマ体験」と言います。

医学的には、「急性ストレス障害」と言います。

日常にあるトラウマ体験

近年、トラウマ体験になる出来事は、身近な人間関係や仕事など、日常生活のなかにも溢れていると指摘する専門家もいます。

PTSD

トラウマ反応は、その体験後、次のようなケアをせず、そのまま頑張ってしまうと、トラウマ反応が残ることがあります。

  • トラウマ体験をした状況や環境から離れる
  • 身近にトラウマ体験によるトラウマ反応を理解して、そのことを過小評価せずに受けとめて労ってくれる人との関わりのなかで生活する
  • トラウマ反応が低減するまで自分を労う過ごし方をする

トラウマ反応が低減するまでの期間は、医学的には1ヶ月と言われていますが個人差があります。

トラウマ反応が低減せず、PTSDの診断基準に当てはまるトラウマ反応が残るとPTSDと診断されます。

トラウマ反応についての理解

ここでトラウマ反応について誤解しないでほしいことがあります。

トラウマ反応は、危機的な状況に直面した時に、生物として一時的に身を守るため生命を維持するための心理的・身体的防衛反応です。

人間として自然な反応なのです。

したがって、トラウマ反応そのものが問題や障害ではないということです。

何より、精神的に強い・弱いとか、性格や人間性の問題ではありません。

しかし、トラウマ反応が解消されないで残ってしまうと、身体は身を守るために一定の緊張状態を維持することになります。

それは、警戒態勢が解除されず、常に続いているような状態です。

その警戒態勢ゆえに、身を守る必要のない状況でも、ささいな危機の兆しでも、引き金になることもあり、本人の意思とは関係なく心理的・身体的防衛反応が出てきてしまうことがあります。

そのイレギュラーなトラウマ反応が人間関係の悩みや問題、現実的な問題をつくりだしていきます。

トラウマ反応は、心理的ストレス反応だけではなく、危機対応の生理的ストレス反応も生じるので、身体の緊張や疼痛、胃腸の不調、不眠などの身体症状もともなうので、こうした反応により、生きづらさも募っていきます。

誰もがトラウマ反応を抱えている

実は、どんな人も、気づいていないところで、人生のどこかでトラウマ体験をしていて、何らかの解消されないトラウマ反応を抱えているという理解があります。

日常的には、こうしたトラウマ反応を、性格や癖として受けとめて、それなりに付き合いながら生活していることもあります。

トラウマ体験に自分なりに適応するために学んだ教訓が生きづらさを募らせる

トラウマ体験をした時に、適切な理解と保護やサポートを得られないと、混乱や戸惑い、不安や怖れのなかで、トラウマ体験から身を守るために、「適切な理解と保護やサポートを得られない前提の教訓や術」を自分なりに学んでしまいます。

例えば、

  • 「人を信頼してはいけない」
  • 「何もなかったふりをしろ」
  • 「自分は役に立たない人間だ」
  • 「やるだけ無駄」
  • 「誰も自分を守ってくれない」
  • 「本当のことを話してはいけない」
  • 「自分の気持ちは隠して相手にわからないようにしたほうがよい」
  • 「感情は問題を引き起こすから感じないように切ったほうがよい」
  • 「波風を立てるな」
  • 「暴力は普通だ」
  • 「全て自分が我慢すればいい」
  • 「全て自分が悪いんだ」
  • 「全部自分がやるしかないんだ」など。

こうした、トラウマ体験に自分なりに適応するための学びも、さらに生きづらさを募らせていきます。

アディクションの背景にもトラウマ体験

また、アルコールの乱用問題など各種乱用・依存症の背景にはトラウマ体験があることもわかってきています。

トラウマ体験の教訓による学びに加えて、アルコール乱用問題の体験から学ぶこともあります。

例えば、

  • 「酒を飲んでも、明日のことは心配する必要はない」
  • 「お酒は苦痛から逃れるよい方法だ」
  • 「酒を飲むとがんばれる」
  • 「酔っぱらうと人と楽しく過ごせる」
  • 「酒を飲んだら、そこで何を言ってもなにをしても許される」など。

癒しと回復、希望を感じられる人生にしていくために大切なこと

しかし、本人がこうしたことを学んで、生きてきた現実的状況に限界を感じ、そこから脱するために新しいことをはじめようとすると、それまでトラウマ体験に適応して、自分を守ってきてくれた教訓や術が、その邪魔をすることがあります。

したがって、トラウマ体験の影響から離れ、新しい環境や親しい人間関係を築いていくには、「適切な理解と保護やサポートが存在し、それを求めると得られる」ことを前提とする、現実的に役立つ新しい学びと術が必要になります。

新しい学びと術が必要なのは、客観的に現時点の自己理解を深め、自分の課題を明確にするためで。そのために、別の健康的な視点や知識が必要なのです。

特にトラウマやアディクションが関係する支援では、トラウマ体験が日常的に続いている当事者が多く、その影響を受けた生活上の問題や仕事上の問題、経営者の場合は経営上の問題など、現実的な問題が生じています。

したがって、それに対処・対応するサポートも同時に提供していかないと、カウンセリングのなかで癒しが進んでも、生活に戻ると同じ苦しい体験を繰り返してしまいます。

そのため、トラウマ体験が日常的に続いている当事者をエンパワーメント(注)していく、2つの支援が必要になります。

(注)エンパワーメント=その人が本来発揮できる能力を持っているにもかかわらず、さまざまな制度や社会的抑圧、資源不足、身近にある課題や問題等の影響を受けて、当事者として尊重されず、その能力発揮や能力開発が妨げられている状況・状態から、社会的にも個人的にも当事者として尊重され、主体的に自分の権利と能力を最大限に活かせるようになっていくと同時に、自分の生活や環境を自分自身で調整する力を持てるようになっていくプロセスを支援していくこと。

感情調整やコミュニケーション等のスキル習得

心理的ストレスやトラウマ反応に対処できるようになるスキルを習得して、自分自身のニーズに気づいて満たしながら自分を労いケアしていくことができるようになっていくための支援。

物事の捉え方や現実的スキル

それと同時に、何か問題が生じても、自分の行動に責任をもち、今までとは違う肯定的なやり方で解決していくために必要な新しい物事の捉え方とスキルを身に付けてもらうための支援です。

トラウマケア

その支援の中で、過去のトラウマ体験の記憶が浮上してきたらトラウマ記憶とトラウマ反応のケアをしていきます。

人間関係の問題

しかし、人間関係においては、関係性の調整や再構築は相互の協力なしでは成立しません。

相手の立場に立てば、相手の世界の正しさがあり、それをどちらが正しくて誤っているのか良し悪しの判断で決着をつけようとしても、結局、パワーゲームにしかならず、ゼロサムゲームが続くだけです。

では、対立がある時にどうすればいいのか。

それは、問題と人を区別することです。

「問題が問題なのであって、その人は問題ではない」

これは家族療法の一つナラティブ・セラピーで言われる「問題の外在化」です。

人そのものが問題であれば、人が変わらない限り問題は解決しません。しかし実際には、「人が変わる」ことではなく、「問題との関わり方を変えていくこと」で解決に向かっていきます。

その過程で、人は状況や相手と関わる姿勢や言動を変えていくことで解決に向かっていき、自ら様々なことに気づき学び変わっていきます。

カウンセリング

カウンセリングは、当事者が申し込んでカウンセリングを受けて、ご本人が望むゴールに辿りつくために、自分を労いながら自分の課題を癒す場です。

また、新しいことにもチャレンジして、そのプロセスや結果についてセッションの中で話し合い、カウンセラーからフィードバックを受け取り、実現していく過程の中で、新しいものを身に付けるためのサポートを得る場でもあります。

カウンセリングは、「適切な理解と保護やサポートが存在し、それを求めると得られる」ことを前提とする、現実的に役立つ新しい学びと術を身につけていくサポートを提供していく関係なので、一歩を踏み出す良い機会になり、さらに、ゴールに辿りつくために役立つ支援です。

文責 プロカウンセラー 池 内 秀 行

2020年04月13日作成,2020年07月30日改訂,2020年08月02日一部修正 

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