
自分自身に気づく
こんにちは。カウンセラーの池内秀行です。
カウンセリングセッションの中では、多くの人が、自らの内面に深く気づくような体験をされます。
自分自身に気づく体験があると、その人の眼差しは生き生きとし、声もハッキリしたものに変わり、その場にいる私も共鳴し、その嬉しさが伝わってくることがあります。
カウンセリングプロセスの中で「自分自身」に気づく体験
このような体験には、言語化しづらい感覚も多く含まれています。
カウンセリングでは、自己認識力が育まれ、さらに私のセッションでは身体感覚も大切にしていくため、その両方が合わさって「自分自身」に気づく体験が深まっていきます。
自分探しの旅 本当の自分とは?
仕事や生活に疲れ、自分のしていることの意味がわからなくなる、自分が何者かわからなくなる――そうした経験は多くの人に共通するものです。
また、家族関係や人間関係、環境の影響で生きづらさを感じつつも、しがらみや忙しさで変化への行動が先延ばしになっている場合もあります。
こうした状況の中で、人は何か新しいことを探し始めたり、自分探しの旅に出ることもあります。
例えば、実際に旅に出る、資格試験の勉強をする、大学や大学院に入る、コーチングやメンタリングを受ける、マインドフルネスや瞑想を実践する、自己啓発やスピリチュアル系の本を読む、オンライン講座やウェビナーに参加する、SNSで発信を始める――その方法は実にさまざまです。
これらは人間として大切な探究活動であり、人生に意味をもたらすことがあります。
自分探しに行き詰まっている人たち
一方で、自分自身を深く知ろうと探求活動に取り組む中で、自分探しに行き詰まり、生きづらさを感じている人たちもいます。
行き詰まりの背景の一つに、「本当の自分」を「特別な役割」と結びつけているケースがあります。
ここでの「本当の自分」とは、「人間としての自分自身」です。
「特別な役割=本当の自分」と誤解していると、他者や社会からの評価が得られない限り満足できず、たとえ物事が順調に進んでいても、自分の内側には無力感や無価値感が残り続けるのです。
そのため、常に「もっと違う自分=もっと特別な役割」を探し続けていきます。
仮に「特別な役割」を見つけて満足しても、その役割が終わると次の役割を探し始め、達成後に休むことができず、自分の価値を役割でしか感じられなくなってしまいます。
こうした状況から抜け出すには、“役割を演じている自分”と、“人間としてのありのままの自分”とを区別できるようになることが大切です。
「自己実現=本当の自分」という考え方
「自己実現している状態が本当の自分」とする考え方もあります。
しかし、「自己実現」は社会的なプロセスであり、他者や社会の価値観・倫理観・規範の影響を受けるため、常に自分自身のニーズが満たされるとは限りません。
自己実現には他者との関係性の中での調整力も必要なのです。
「自己実現している状態が本当の自分」という考え方に強くこだわると、社会的ニーズを優先する場面で葛藤が生じやすく、自己実現しているつもりでも満たされず、また別の何かを探し始めることがあります。
また、強い自己へのこだわりが、無自覚のうちにDVやモラハラ、パワハラといったハラスメント行為として表れる場合もあるため、注意が必要です。
本当の自分=人間としての自分 自分探しの旅
自分探しの旅とは、生まれてから今までに自分に起きた出来事や感情、周囲からの影響やその結果として得た「役割」を見つめ直すプロセスです。
その中で、自分のニーズや感情が明確になってくると、「本当の自分」という感覚がわかるようになり、周囲から与えられた役割に振り回されることなく、自分自身の意志を軸に生きられるようになります。
移民文化では、自分のルーツをたどる旅を通じて、家族や祖先の背景を知り、自分のアイデンティティを深めるという方法もあります。
人間としての自分を大切にして生きていく術
私たちは日々、家族・職場・社会の中で、さまざまな「役割」を果たして生きています。
しかし、その「役割」と「人間としての自分」との違いに気づけるようになると、どちらか一方に偏ることなく、両方を大切にしながら生きていけるようになります。
そのためには、「変えるべきこと」と「変えなくてよいこと」を見極める力が求められます。
たとえば、役割に縛られた結果、当たり前のようにとってしまう反応や行動があるかもしれません。
それに気づき、それまでの習慣を手放しながら新たな習慣を築いていく――これは簡単なことではありませんが、時間をかければ確実に可能なことです。
とくに大切なのは、「自分にとって良いこと」や「心地よい環境」に、少しずつ慣れていくことです。
癒しや回復、変化を求めることも大切ですが、それと同じくらい重要なのが、“良い環境に身を置き、自分をそこに馴染ませていく”というプロセスです。
この過程は、まるで「三歩進んで二歩下がる」ように、ゆっくりと進んでいきます。
そのため、途中であきらめずに踏みとどまる力や、時間をかける覚悟も必要になります。
私がカウンセリングで大切にしているのは、「その人にとって本当に良い環境とは何かを一緒に見極めること」、そして「どうすればそこに安心して身を置き続けられるか」を一緒に考えていくことです。
そして、「良いと感じるものを、自分のものとして受け入れ、慣れていく」ことも、回復や成長の大切な一部であり、ウェルビーイングを向上させていくために大切なプロセスの一つです。
よくなったと感じられたあとも、人生は続きます。
だからこそ、その先のステップも丁寧に見据えていくことが大切です。
このように、良いものに触れながら、自分に馴染ませていくプロセスを大切にしていくと、「人間としての自分」がより深く理解できるようになります。
そして、それは日常の中でリアルな充実感を感じながら生きる土台となってくれるのです。
トラウマの影響を理解し、トラウマ反応を癒していく
トラウマもまた、「自分らしく生きること」を妨げる大きな要因のひとつです。
トラウマ反応とは、危機的な状況における生存のための防衛反応であり、過覚醒、フラッシュバック、解離、感覚の麻痺などの形で現れます。
これらの反応が起きているとき、心と身体は「自己のニーズ」よりも「身を守ること」を優先してしまうため、本来の自分として日常を生きることが難しくなります。
また、明確なトラウマ反応ではない場合でも、過去に困難な時期を経験していると、「あのような状況には戻りたくない」という思いが強く働き、そのときに身につけたサバイバル的な適応モードに無自覚に切り替わってしまうことがあります。
その結果、すでに不要になった防衛パターンが繰り返され、「自分らしさ」が制限されてしまうことがあるのです。
こうした反応は、意志の弱さや性格の問題ではなく、心と身体が自動的に身を守ろうとする自然な働きです。
しかしそのままでは、現在の状況とのミスマッチが続き、人間関係の問題が生じたり、生きづらさを感じることがあります。
カウンセリングの中では、まずこのような自覚できていない・自覚しにくい反応に気づき、「それは自分を守ってきた反応だったのだ」と理解することから始まります。
そして、安心できる関係性の中でプロセスが進むと、心と身体が「もうあのときとは違う」「あの状況は過ぎた」と実感できるようになります。
このプロセスが進んでいくと、過去に必要だった防衛反応が、今はもう自分を守る必要のない場面では自然と起きにくくなっていきます。
そして、自分本来の力や感受性、能力を取り戻しながら、安心して、自分らしく日々を生きていくことができるようになっていきます。
2025,05,28バージョンアップ改訂,2025,05,30一部追記
文責 カウンセラー池内秀行
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Wrote this article この記事を書いた人
プロカウンセラー池内秀行
個人・カップル・家族・友人同士など、幅広い人間関係やライフステージの悩みに対応する心理カウンセリング・セラピーを提供しています。人間関係の悩み、家庭内の悩み、恋愛・夫婦関係の改善、職場での悩み、自己理解や自己肯定感の向上、不安・抑うつ・トラウマの癒し、生きづらさの解消など、多様なテーマに寄り添います。 クライアント一人ひとりの背景や課題に応じたオーダーメイドのカウンセリングを大切にし、安心してお話できる環境を整えています。初めての方でも不安なくご利用いただける丁寧なサポートを心がけています。 オンラインカウンセリングで海外在住の方にも対応 Zoomなどを用いたオンラインカウンセリングにも対応しており、海外在住の方、日本語での心理サポートを必要としている方にも多くご利用いただいています。時差や言語の壁に悩むことなく、安心してご相談いただけます。 東京から全国・全世界へ対応可能です。お気軽にお問い合わせください。