「いじめ」の理解と影響

「いじめ」の理解と影響

いじめの背景にあるもの

いじめの始まりは、最初はちょっとしたイタズラだったのに、それがキッカケで当事者が想像できないような連鎖が起こり大きくなるものから、最初から悪意があるものなど、さまざまなバリエーションがあります。

また、いじめの関係では、いじめている方が、いじめられている方の必要性について、ほとんどまたは全く尊重する関わり方をしない一方的な関係なので、マウンティングや各種ハラスメントもいじめに含まれます。

したがって、いじめの背景には、個人的な問題、人間関係の問題、関係性の力学、ピア(仲間)プレッシャーの問題や、年齢・上下関係・競争など集団や組織の同調圧力や政治的・文化的なパワーバランスの問題など、さまざま要因が複雑に絡み合っていることが多いのが実情です。

いじめは、その原因や背景を明らかにして解決していくことも必要ですが、原因や背景がわかったからといって、すぐに解決しないケースもたくさんあります。

いじめの苦痛とダメージの大きさ

いじめによる苦痛は、精神的なものと身体的なもの両方の苦痛を体験します。

言葉の暴力や、一方的な決めつけによって精神的に疲弊しダメージが継続するものにくわえ、突き飛ばされたり、叩かれたり、つねられたり、殴られたり、酷いものとして性的に苦痛をともなう身体的な暴力をともなういじめ(男女関係なく存在します)もあります。

どのような形にしても、その体験そのものがトラウマ体験となって、トラウマ反応が身体症状として現れ、疼痛など慢性的な身体的不調になっていることもあります。

当事者は、嫌というほど、言葉にあらわせない苦痛を体験していて、それが生きづらさになっていることもよくあります。

そして、その精神的苦痛を言葉にすることそのものが苦痛を伴うので、他の人に、その体験を打ち明けることは難しく、それも手伝って、深刻な酷い体験をしているにもかかわらず、それを話して、周囲の人たちにわかってもらい理解してもらうことを、とても難しく感じている人も多いです。

それでも、勇気を出して打ち明けたとしても、その精神的苦痛を受けとめて理解してもらえず、さらに傷つくこともよくあるのが実情です。

特に、身近な人に話をしても、いじめられて体験した苦痛を理解してもらえないうえに、相手に悪気はなくても「あなたにも悪いところがあったんじゃないの?」と自己責任を問われて叱咤激励されてしまうと、さらに傷ついてしまいます。

いじめによる苦痛を理解してもらえず、そのうえ叱咤激励されると、さらに当事者が深く傷つくのは理由があります。

それは、いじめられている当事者は「社会的苦痛」も体験して苦しんでいるからです。

社会的苦痛とは?恥との関係

社会的苦痛とは、さまざまな形で、社会的関係の中で体験する苦しみです。

特に関係する感情は「恥(シェイム)」です。

「恥」は、社会的な感情と言われており、その人が属している社会の規範や常識と言われていることと、自分が違うことをすると感じる感情です。

この「恥」そのものは、感じると、自分の言動を省みて、周囲との関係で、自分の言動を調整するきっかけを与えてくれる、社会生活を営む上では、とても大切な感情です。

しかし、本来、社会生活を営む上で他者との関係を調整してくれる大切な機能をもつ「恥」を、恥辱されて体験すると、それはその人を助ける「恥」ではなく、恥辱感となります。

「恥辱感」を感じる体験は、心理的にダメージを与えるので、その結果、感情表現はもちろん、自分の考えを表明したり、物事や他者との関わりにおいて具体的な言動が萎縮してしまいます。

いじめの構造

いじめの始まりは、二者間の個人的な問題であることがよくあります。

二者間の関係性の問題が、集団の問題にすり替わり、それがいじめになっていきます。

例えば「誰かが誰かの悪口を言った」などということがあると、本来であれば、その悪口を言った人と悪口を言われた人の二人の関係の中で話し合いをして解決する問題です。

しかし、周りの人が悪口を言った人の方の味方になり、相手が悪いという立場に立ってそれが多数派になると、多数派対個人又は、多数派対少数派という構造がうまれ、個人間の問題が集団の問題にすり替わってしまいます。

いじめという悲惨な状況は、こうした構造が背景にあることが多いのです。

そして、いじめの構造ができ上がってしまうと、いじめの対象にされた人に対して、多数派のこころない人たちの中には、その構造の中で、その人を蔑んだり批判しても許されるという態度をとったり、また相手の欠点を追求することで、より深刻な問題になっていきます。

社会的苦痛と恥の影響

いじめられている人たちの様子が、他者からみると、萎縮しているのは、こうした恥辱感の影響や、常にこれ以上いじめられないようにという身を守る防衛反応が常態化していることが、その背景にあることがよくあります。

身を守る防衛反応は、身体的な緊張をともなうので、そこには、身を守るための怒りもともないます。

例えば、次のような体験が社会的苦痛を体験する、恥辱感をともなう「恥」の体験となることがよくあります。

  • 不公平な扱いをうける体験
  • 裏切られる体験
  • 差別をうける体験
  • 孤立する、孤立させられる体験
  • 迫害をうける体験
  • 人種差別をうける体験
  • 人間関係や集団から強制的に一方的に排除される体験
  • 非行グループや反社会的グループの一員として生活して、その一員としての言動や活動に罪悪感や恥を感じるようになった時
  • 自分の家庭環境や家族メンバーの言動について罪悪感や恥を感じるようになった時
  • 他者を傷つけなくてはいけないような立場に立たされたり、そういう状況のなかにいることに気づき、自分の良心の呵責に苦しむ時
  • 他の人が酷く傷つけられたり虐待されているのを、ただ見ているしかない状況に巻き込まれ、自分の良心の呵責に苦しむ時
  • 何か問題を抱えていることや個人的な特徴をもっていること、境遇などを理由に、不当に非難されたり、面目をつぶされたり、遠ざけられたり、拒絶される等の体験

精神的苦痛が身体症状になっていることもあります

また、精神的苦痛が人間関係の問題になっていることはもちろん、身体的な症状になっていることもよくあります。

特に自律神経失調症など、ストレスの影響が大きいと言われる心身症の症状は、精神的苦痛を和らげていく積極的なケアが大切になります。

サポートを求め、サポートを受けましょう

いじめの問題を解決していくには、周囲の人たちの支援やいじめに対する介入が必要です。

しかし、現実的には、いじめの問題があるところには、周囲の人たちがいじめに気づいていても介入したり、介入できないという問題が同時に存在します。

周囲の人たちが介入できない背景にもいろいろありますが、例えば次のようなものがあります。

  • 目の前で起こっていることをその人が緊急事態と認識していたとしても、周囲を見渡して誰もそのことに反応していないと、自分だけが緊急事態と認識しているだけで他の人は緊急事態と認識していないと思ってしまい、自分の認識は間違っていると思って何も行動を起こせなかったという場合があります(多元的無知)。
  • また、緊急事態でも周囲の人の人数が多くなればなるほど結果に対する責任感や罪悪感を軽減させて援助が抑制されて介入できなかったという場合もあります(責任の拡散)。
  • さらに、目の前で起こっていることに介入したいと思っても、どのように関わればよいかわからなかったり、他の人もトラウマ性のストレスを感じて、いくら何とかしたいという強い思いが湧き起ってきても、トラウマ性のストレス反応で身動きできなくなって何もできなかったという場合もあります。

このように、いじめの悩みや問題は自身で解決するには難しいことが多く、周囲の親身になってくれる人も介入しようにも介入できなかったりすることがよくあります。

したがって、いじめの悩みや問題は、身近な信頼できる人だけではなく、カウンセラーの専門的なサポートを受けることをお勧めします。

カウンセリングでは、当事者ではみえない多角的な視点で対処方法を一緒に考えてアドバイスを受けることができますし、対人関係のスキルを身に付けたり、こころのケア、トラウマケアをしていくことで、いじめから抜け出していくサポートを得ることができます。

文責 プロカウンセラー池内秀行

2015年09月15日作成,2020年08月17日一部改訂


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プロカウンセラー池内秀行

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