仕事上のモチベーションと満足度、そして人間関係

仕事上のモチベーションと満足度、そして人間関係

はじめに

仕事をしているほとんどの方が、1日の大半を職場で過ごし、様々な人と関わりながら仕事を行っています。

また、従来の出勤型だけではなく、雇用形態と求められる業務内容により多様な働き方のスタイルが生まれ、さらに、コロナ禍の影響で、リモートワークも増え、会社の中には、物理的なオフィスが存在しない会社もあります。

カウンセリングの現場で感じるのは、働き方のスタイルの多様化にともない、仕事上のモチベーションもさらに多様化してきていることです。

一方、どのような仕事でも、その業務は、内容によっては一人で完結出来る業務内容であっても、必ず他の業務と関連性があるため、必ずどこかで関連性がある業務を行なっている人たちとの人間関係があります。

その関係性は、業務上の関係性だけではなく、業務を行なっていく上での報告・連絡・相談の他に、人としての関わり、人としてのコミュニケーションが必要な人と人の人間関係も存在しています。

特に、リモートによる業務は、その形態の特徴として、業務以外の人と人の関わりが希薄になりがちです。

仕事上のモチベーション

仕事上のモチベーションは、一つではなく、人それぞれ共通していることもあれば、異なることもあり、実際はその両方が混在するもので、一つではありません。

個人的なニーズに基づくモチベーションと社会性や人間関係に基づくモチベーション

また、何か目標がありそれを成し遂げたい、学びたい、成長したい、好奇心や探究心、自分自身の生活のためなど、個人的なニーズと満足に基づくモチベーションと、社会的な意義や誰かの役に立つこと、誰かの期待に応えること、誰かに認められること、褒めてもらうこと、好きな人・愛する人・友達・家族など自分自身にとって大切な人のため、大切な人たちの生活のためなど、社会性や人間間に基づくモチベーションがあります。

仕事上のモチベーションが有る無しの基準

仕事上のモチベーションが有る無しの基準は、2つの視点があります。

「他者から評価される外側の評価基準」と「自分自身で認識する主観的な評価基準」により評価・認識する視点です。

他者から評価される外側の評価基準

他者から評価される外側の評価基準による場合は、評価者側の価値基準にそったモチベーションであるかどうかの評価になります。

この場合、その評価基準が明確に示され、どのような価値観で評価されるかの説明が十分になされないまま、他者に評価されると、その評価を客観的に受け入れることができなかったり、十分に説明を受けても、自分自身の価値観にそぐわない評価基準であればあるほど、評価のフィードバックのされ方によっては自分自身が否定されている体験になったり、その状況や関わり方によっては傷ついたりハラスメントになる場合もあります。

しかし、その評価基準が、自分自身の評価基準と整合性があったり、価値観が一致している、似通っている場合は、仕事への動機付けになったりします。

自分自身で認識する主観的な評価基準

自分自身で認識する主観的な評価基準による場合は、現実的な満足を得ようとする意欲や、自分自身が求める安らぎや充足感などのフィーリングがその有無を教えてくれます。

モチベーションと生理学的反応

自分自身で認識する主観的な評価基準によるモチベーションにおける生理学的反応

交感神経優位系・戦うモード

現実的な満足を得ようとする意欲は、生理学的には、神経伝達物質であるドパミンの作用で交感神経が活性化してノルアドレナリンやアドレナリンのホルモンが放出され、交感神経優位のモードになります。

その作用で心臓の鼓動が早くなったり筋肉の血流が増えるなど、身体は戦うモードになり、自分のニーズを満足させるために必要なものを得る活動を行うためのエネルギーが高まります。

このエネルギーの高まりが、やる気や意欲の源泉になります。

よく話題になるモチベーションはこ交換神経優位の生理学的な反応を伴う意欲のことを前提にしていることが多いと思います。

副交感神経優位・安らぎ充足感系

一方、得ようとする意欲の他に、安らぎや充足感などもモチベーションになっている人たちもいます。

生理学的にはドーパミンとアドレナリンを調整する、幸せホルモンと言われるセロトニンの作用により、副交感神経が優位になり、脳の興奮が沈静化して、心身もリラックスモードになります。

大変だけど、この安らぎや充足感を感じる時間と体験が得られるから頑張る、というのがモチベーションになっている人たちも存在するのです。

他者から評価される外側の評価基準によるモチベーションの生理学的反応

生理学的な反応は、他者から評価される外側の評価基準による場合は、価値観が異なる場合等は「見返してやりたい、認められたい」など対立的なものは交感神経優位モードのモチベーションになります。

そして、価値観が一致している似通っている場合も他者との関係の中で体験するので交感神経優位モード、その内容が安らぎや充足感等の場合は副交感神経優位モードのモチベーションになるか、両方のモチベーションを感じる人たちもいると思います。

仕事上のモチベーションが高い・程々・低い・無い

仕事上のモチベーションが高い状態の人

仕事上のモチベーションが高い状態の人たちは、自分の業務内容と自分の興味や好奇心、探究心がある程度マッチしていたり、業務や待遇面で、自分が欲しいと思っているものが手に入って満足するシステムになっているときなど、仕事と本人のニーズが相互に補完関係にあると状態の人たちと考えられます。

生理学的反応としては交感神経優位系のモチベーションです。

また、職場の人間関係で、一緒に仕事をすることが楽しい業務上の人間関係があったり、職場以外の人間関係で親しい友人や恋愛関係、家族関係など、自分自身のニーズが満たされる人間関係がある時も、その満足を支えるものの一つとして自分の仕事が位置付けられている人たちは、その満足が仕事上のモチベーションになっていると考えることができます。

生理学的反応としては副交感神経優位系のモチベーションです。

仕事上のモチベーションが高い人たちは、生理学的反応としては、交感神経優位系と副交感神経優位系もそれぞれモチベーションになっていることについて結果の満足度も高い状態の人たちと考えられます。

中には、両方のモチベーションがバランスよくあり、両方とも結果の満足度が高い状態の人たちであることも考えられます。

仕事上のモチベーションが程々の状態の人

仕事上のモチベーションが程々の状態の人たちは、前記の高い人と同じく交感神経優位系と副交感神経優位系のいずれか一方の場合も両方バランスよくある場合も、それに伴う結果の満足度が程々の状態で、その程々をある程度受け入れて満足している状態の人たちと考えられます。

仕事上のモチベーションが低い状態の人

仕事上のモチベーションが低い状態の人たちは、交感神経優位系と副交感神経優位系のいずれか一方の場合も両方バランスよくある場合も、それに伴う結果の満足度が低い状態で、その低い状態についてある程度受け入れて仕方ないと思っている人たちであると考えられます。

また、本人がどう頑張っても今の環境ではこれ以上は無理と諦めていたり、良い環境の中にいても過去の嫌な体験やトラウマ体験などの影響を受けて、自分自身は良い結果や満足は得られないと思っているなど、低い状態について、それぞれ理由がある人たちであるとも考えられます。

他にもいろいろ、その人自身の抱えている問題や、社会的要因なども考えられます。

仕事上のモチベーションが無い状態の人

仕事上のモチベーションが無い状態の人は、職場がブラック企業であったり、ハラスメントなど安心して仕事ができる環境や人間関係が存在しないなど、本人の努力ではどうにもならない問題の影響を受けている状態の人たちであることが考えられます。

社会的な問題や家族などの問題で、自分ではなく他者の事情を優先して自分が納得し切れていない仕事の仕方や仕事内容の仕事をしている場合なども考えられます。

さらに、本人は仕事をしたいと思っても、何らかの理由や背景があり、周囲の人たちの無理解で思うように仕事がさせてもらえない状況下にある人たちで、努力した結果、結果につながらず諦めていたり、無力感や無価値観を感じている人たちであることも考えられます。

他にもいろいろ、その人自身の抱えている問題や、社会的要因なども考えられます。

仕事上のモチベーションと人間関係

仕事上のモチベーションは一つではなく、いろいろなモチベーションが混在しています。

しかし、モチベーションは、その人自身のニーズそのものであったり、そのニーズと関係しているものなので、現実的にも心理的にもある程度の満足が伴わないと、モチベーションに影響を与えます。

その点では、モチベーションの状態は、本人だけではなく、その環境の質と関わる人間関係の質、そして仕事の仕組みと関係があります。

特に職場の環境の質と仕事の仕組みは、個人の問題ではないので、仕事上の立場によって対処方法が異なります。

一方、人間関係の質は、個人の対人関係のスキルアップや新しいマインドセットを取り入れるなど、良好な人間関係を築いていくことで、自分のモチベーションをマネジメントしていくことは可能です。

また、自分だけではなく、他者のモチベーションも大切にして、相互にモチベーションを大切にする関わりをしていくことで、その関係性が、充分ではない職場環境と仕事の仕組みの中でお互いサバイブしていくリソースになり得ます。

良好な人間関係がもたらすもの

人間関係が良好だと、意識的にモチベーションをあげようとしなくても、お互いの関わりそのものが気分をよくしてくれ、相互に副交感神経優位の安心感や充足感をもたらしてくれるので、そこから、外側に向かって好奇心や探究心が湧いてくることがあり、それが、仕事のモチベーションを高めてくれるることもあり得ます。

人間関係の問題がもたらすもの

一方、仕事上の人間関係の問題は、悩みやストレスを個々が抱えることになり、モチベーションのもとになるニーズが満たされる結果が出ていても、その悩みやストレスが影響して満足度が下がっていることもよくあります。

職場の人間関係の問題は、気づかないところで金属疲労のように進行することが多く、職場で相談しても、真正面から取り上げてもらえなかったり、また、上司や人事に相談すると、評価に悪影響を及ぼされることを懸念して、相談出来なくて、悩みとストレスを抱えたまま頑張っている人たちも少なくありません。

良好な関係性を育み、続けていくには

職場の環境の質や仕事上の仕組みの問題は、個人の問題ではなく、それを調整したり改善していくのは会社側の取り組みと努力が必要です。

人間関係については、個人レベルでも良好な関係性を築いていくことを意識した努力ができます。

とてもベーシックで、過去も現在もそして将来に向かっても変わらないであろう、良好な関係性を育むために役立つことがあります。

それは「あいさつです」

「おはようございます」「こんにちは」「さようなら」

さらに、「お疲れさまです」「ありがとうございます」「ごめんなさい」「助かりました」などの相手を尊重した声掛も役立ちます。

そこに、人の話を共感的に聞くことや、自分も相手も尊重するコミュニケーションとしてアサーティブなコミュニケーションを心がけることや、セルフケア、悩みや問題があればカウンセラーなど専門家に相談するなど他者の協力を得ることなど、どれか一つではなく、複数を組み合わせて生活の中に組み込んでいくことが役立ちます。

2006年06年12日作成,2020年02月17日一部改訂,2024年03月09日改訂

文責 カウンセラー池内秀行

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プロカウンセラー池内秀行

個人やカップル、家族や友人同士での心理カウンセリング・セラピーを提供しています。個人の生活や人間関係や家族関係、恋愛・夫婦関係などカップルの関係性の改善、仕事の悩みや問題の解決、感情的な悩み、自分自身のこと、ストレスによる身体症状、生きづらさ、トラウマの癒しなど、日頃のちょっとしたことから深刻なことまで、ご相談内容に応じたオーダーメイドのカウンセリングを提供しています。初めての方も安心してお越しいただける環境を心掛けています。お気軽にご連絡ください。

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