不安を味方にしていく

不安を味方にしていく

はじめに

こんにちは。カウンセラーの池内秀行です。

コロナウイルスの影響で、不安の話が増えているのが伝わってきます。

先の見通しが付かない状況の中で、現在、不確かな情報も増えています。

その影響で、それぞれ不安が大きくなるのは人間として自然なことです。

先取り不安

ただ、これまでの日常生活の中であまり不安に飲み込まれることが無かったような人でも、こういう時は、多くの部分的な情報や曖昧な情報に触れているので、自分では気づけなくても、その影響を受けているものです。

その結果、自分で対処出来ない範囲を越えた出来事が起こったり、身近なところでいつものように対処出来ない出来事が起こると、どこかで大丈夫だと思えなくなったり、何かまずいことになるかもしれないという不安が大きくなるものです。

そして、こうした不安を感じると、何も変わらない日常通りのことや、上手くいっていることについても、「まだ何も起きていないにも関わらず、苦痛や危険の可能性を先読みし過ぎて、胸騒ぎや嫌な予感がして、身体的な緊張が高まり、いつものペースが崩れたり、何も手に付かなくなることもあります。そして、その状態が、さらに不安を大きくしいくというスパイラルに陥っていくことがあります。」

このような不安のことを「先取り不安」と言います。

不安は人間として自然な感情

しかし、人は誰でも先のことを考えて不安になることがあります。

それは未来を想像できる人間の自然な感情です。

不安を感じるからといって=「自信がないから」・「気が弱いから」と人間性や性格の問題につながるわけではありません。

「不安」は、未来に向けて、自分の安全と安心を確認する必要があることを教えてくれる大切な感情だからです。

先取り不安の特徴

先取り不安は、先の先まで予想してしまい、2歩先、3歩先、なかには10歩先くらいを予想することで身体の緊張が高まり、その生理学的なストレス反応の影響で動けなくなってしまう状態です。

それは、結果として、まだ安全で安心な状況の中で、危機を先読みして感じる不安で、あたかも危機が起こったかのような警戒態勢に入ってしまい、その警戒態勢が強力すぎて、結果的に自らの安心・安全を崩してしまうことがあります。

しかし、そうなる人でも大丈夫です。

「不安を感じられる」ことを大切に受け入れて「不安」そのものを自分の味方にするスキルを身につけていくことができるからです。

不安を感じるのが好きと言う人は少ないと思います。

不安を感じると、身体的な緊張を伴い、それを不快に感じることが多いからです。

しかし、不安の役割を知ると、身体的に不快に感じることが大切だということがわかってくると思います。

まずは、不安について基本的なことを知ることで、不安と上手く付き合っていくことが出来るようになっていきます。

そして、もし先取り不安に飲み込まれても、そこから脱して、自分の安心・安全を大切にすることで、不安がホッとした感じや安心感に変わっていきます。

感情の理解

不安を味方にするスキルを身に付けるていくために理解しておく必要があることがあります。

それは、「感情というのは一時的なもので移り変わっていく」という理解です。

人はどんな時に不安を感じるのか?

それでは、人はどんな時に不安を感じるものでしょう。

代表的なのは次のような時です。ここで感じる不安は人間として自然な感情です。

  • 自分だけで対処出来ないと思う問題が起きているとき
  • 先がどうなるか不確定なことを決めたり決断するとき
  • 今までにない変化を前にしたとき。この変化は良い悪い関係ありません。
  • 自分にとって必要なことや大事なことについて、その結果がどうなるかわからないとき
  • 自分にとって困難と思うことに挑戦するとき

不安から先取り不安へ

上記で不安を感じるのは、人間として自然な感情なのですが、そこに下記が加わると、フラストレーションで先取り不安になっていきます。

  1. 小さなできごとを材料にして否定的なストーリーを組み立ててしまう
  2. 事実を確認しないまま、自分の主観を基準にした推測による決めつけや思い込み
  3. 周囲の目ばかり気になってしまい、混乱して自分自身がどうしたいのかわからなくなってしまう
  4. 不安を感じる出来事が、他人の事なのに、その問題に巻き込まれてしまい、関わりを断れず、その状況から抜けられないとき
  5. 失敗したら全てが終わってしまうと思っているとき
  6. 自分の不安の中身をみるのが嫌で、自分の置かれてる状況や問題に向き合いたくないとき

不安を感じている時の生理学的身体ストレス反応

そして、人は不安を感じると、身を守るための生理学的なストレス反応で身体は警戒態勢に入り、身体が緊張します。

不安を感じた事が、自分で対処出来る範囲のもの、状況や結果が予測出来る範囲のことであれば、対処行動に移れるので、対処していく中で、不安は解消されていきます。

一方、自分で対処出来ない範囲のもの、状況や結果が予測出来ないことであれば、さらにストレス度が高まり、警戒態勢が強くなっていきます。

その身を守るための身体のストレス反応によりエネルギーがつくりだされ、その影響で身体の警戒態勢を教えてくれる感情的な不安は、次の身体の反応は身を守るための攻撃モードに移行していくので、感情的には不安が怒りに変わっていきます。

ここで動けると良いのですが、私たちは文化的に急に攻撃する行動に出たり、大声をあげたりすると周囲から変に思われて恥かしいと学習しているので、結局、行動には移せず、ストレス反応で活性化したエネルギーは行き場を失い、身体は圧力鍋のような状態になり、身体の緊張が高まり固まってしまいます。

身体反応としての固まる反応が、感情面での不安をさらに強くして、ここで一気に自動思考が働いて、さらに不安が強くなっていきます。

本当は個々により、もっとバリエーションがあるのですが、不安と上手く付き合っていくスキルを身に付けるには、こうした一般化した記事のレベルでは、上記のような基本理解があれば大丈夫だと思います。

不安を味方にするプロセス

身体の緊張に気づいて緩める

最初に大切なのは、身体が緊張していることに気づくことです。

身体の緊張に気づけたら、まずは「水で手を洗ったり」、「お水を一口ゆっく飲んだり」、「クッションを抱いたり」、何か外側に注意を向けて、身体の緊張がリリースされていくのに役立つことをして、身体を落ち着かせることが大切です。

この時、いろいろ学んでいる方の中には、深呼吸やマインドフルネスを使う方もいるかもしれません。

しかし、身体の緊張度が高いと、生物としての身を守るストレス反応の方が強いので、深呼吸よりは、吐く息を意識しながら、ゆっくい長く息を吐く方に注意を向ける方が役立ちますので、吸う息は浅くても深くてもどちらでもOKです。

また、マインドフルネスも良いのですが、これも身体の緊張が高いと目を閉じて瞑想しようとすると、視界が途切れるので、さらに身体の緊張が強くなることがあります。

したがって、ある程度、身体の緊張が緩んでから取り入れることをお勧めしますし、最初から目を閉じない、マインドフルネスの方をお勧めします。

不安を感じていることを確認して受け入れる

次に、身体の緊張がある程度緩んできたら、まず「私は今、不安を感じているんだな」と自分の状態を確認して受け入れてあげてください。

なかには、ここまでをゆっく行うだけで、不安が低減する人もいらっしゃいます。

不安の正体を見極める

そして、ここでようやく物事を客観的に眺めることが出来るようになってくるので、不安の正体を見極めていきます。

この不安の正体がわからなかったり、身体の緊張が緩まず不安が低減しない人は、カウンセリングを受けて、緊張の緩め方を身につけたり、不安の正体を見極めることをお勧めします。一人だとよけいに辛くなる可能性があるので、自分を大切にするという意味で無理はしないことです。

不安の正体に行動で対処する

不安の正体をみきわめることが出来たら、不安の正体に行動で対処していきます。

例えば次のようなことが役立ちます。

  1. 不安を客観的に眺めながら、自分は何を必要としていて、何を望んでいるのかを見極めて、どうするかを決めて、行動に移していく
  2. 行動に移していくにあたり、「自分が今までにうまくできたこと」「自分なりに精一杯やってきたこと」を思い出して自分の力を確認したり認める
  3. 戦略として、やっかいなことは小分けにして対処していく
  4. 出来ることをベストをつくしてやって、後は手放して(こだわるのをやめるということ)、出来ることをベストを尽くして続けながら、自分自身で変えられることは変えていき、自分自身では変えられないものは状況に委ねる。

プロセスがスキル

このように、自分の身体の緊張に気づいて緩めて、自分が不安を感じていることを受け入れて、不安が低減してきたら不安の正体を見極めて、そして、対処していく。この一連のプロセスが、不安を味方にしていくスキルです。

どうぞ試してみてください。

(文責) プロカウンセラー池内秀行

2024-03-06一部改訂


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プロカウンセラー池内秀行

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