カウンセリングで体験するスピリチュアルな癒しとは?〜心と身体を回復へ導く力〜

カウンセリングで体験するスピリチュアルな癒しとは?〜心と身体を回復へ導く力〜

心と身体を回復へ導く力

スピリチュアルな体験とは、人が自然の驚異や人生の苦難に直面したとき、大いなる存在とのつながりを感じることで得られる気づきや安心感、回復の感覚の総称です。

この記事では、宗教的信仰に基づかない、個人の体験に根ざしたスピリチュアルな癒しに焦点を当て、カウンセリングの中でそのような癒しがどのように生じうるかについてご紹介します。

こうした体験は感覚的・直観的なものでありながら、近年の神経科学や心理学の研究でも、身体の状態や心の働きに与える肯定的な影響が裏付けられつつあります。

スピリチュアルな癒しの起源と背景

スピリチュアルな癒しとは、太古の昔から人類が営んできた、目に見えない力や存在とのつながりを通じて、導きや心の安らぎ、回復を得ようとする営みを指します。

先住民の儀式やシャーマニズム、宗教的祈り、自然崇拝には、神や自然、祖先とのつながりを感じることで、苦しみや死を超える導きを得ようとする文化的実践が見られます。

これらの実践は、自然災害や喪失体験、トラウマなど、極度のストレス状況からの回復手段として、多くの文化に根付いてきました。

現代の臨床研究では、こうした体験が心理的回復を促すことが科学的にも検証されています(Park, 2010/Koenig et al., 2012)。

社会的支援や他者との関わりでは満たされない心理的・身体的ニーズに対し、人は内面的なつながりを求めることで、自律神経系の働きが整い、深い安心感がもたらされることがあります(Porges, 2011)。

身体の緊張と孤独感のつながり

強いショックを受けたとき、人の身体は生理的にストレス反応を示し、緊張状態に入ります。

これは「闘争・逃走・凍結」と呼ばれる防衛本能であり、生存のための反応です(van der Kolk, 2017)。

この状態が慢性化すると、リラックスや安心感を得にくくなり、他者との関係にも支障をきたすことがあります。

過敏になった身体は、無害な相手にも緊張を抱き、誤解や摩擦を生じさせます。

結果として、「自分は理解されない」「一人だ」という孤独感が強まり、ショック体験を再び避けようとする反応が、かえって孤独を深めてしまうという矛盾が生じます。

スピリチュアルな体験―身体の緊張が解かれていく体験

慢性的な緊張を抱えた身体は、「安心」や「くつろぎ」といった感覚を感じにくくなります。

しかし、静かな自然や祈りの場など、特別な空間に身を置いたとき、思いがけず身体の緊張がゆるむことがあります。

このとき、人は「自分を超えた何かに包まれている」ような感覚を覚えることがあり、それは宗教的信仰を問わず、身体感覚として現れます。

実際、瞑想や祈りの実践が脳の構造や活動に変化をもたらすことが科学的に報告されています(Lazar et al., 2005/Newberg et al., 2003)。

こうした体験は、身体の防衛反応が和らぎ、自律神経系が整うことで「大丈夫かもしれない」といった前向きな感覚が芽生えるプロセスでもあります。涙が自然にこぼれる場面も、長年の緊張が解放される身体的・情動的反応のひとつと考えられています(Levine, 2009)。

信仰によるスピリチュアリティと個人的なスピリチュアリティの区別

「スピリチュアリティ」には多様な意味がありますが、重要なのは「信仰に基づくスピリチュアリティ」と「個人的な体験に基づくスピリチュアリティ」の区別です。

前者は宗教的教義や共同体の信念に基づき、「神」「仏」などの存在を信じることを前提とし、人生の指針を提供します。

一方、後者は個人が体験を通して感じる実感が出発点であり、自らの内面と存在との関係性に根ざしています。

現代の心理療法では、こうした個人的スピリチュアリティを尊重し、専門的に扱う取り組みが進んでいます(Pargament, 2011)。カウンセラーは、クライアントが持つ個別の感受性を重んじながら、癒しのプロセスを支える必要があります。

カウンセリングにおけるスピリチュアルな癒し

カウンセリングでは、身体感覚に丁寧に寄り添う中で、クライアントが「自分を超えた存在」とのつながりを体験することがあります。

それは、言葉では表現しきれない深い安心感と自己の再確認につながることがあります。

こうした体験は、科学的にも「意味構築(meaning making)」や「トラウマからの成長(post-traumatic growth)」という概念で説明され、心理的な変容に寄与することが知られています(Tedeschi & Calhoun, 2004/Park, 2010)。

この体験は、クライアントにとって、とても個人的なものなので、それを尊重することによって、人生を歩むための内なる「資源」となり、回復と再生へのプロセスを支える大きな力になります。

宗教や信仰との関わりについて

私は、セッションの中でクライアントが特定の宗教やスピリチュアルな教えを大切にしている場合、その背景を丁寧に伺いながら、それを尊重してカウンセリングを進めていきます。

何を信じ、何に支えられてきたかは、その人の人生にとって大切な意味のひとつであり、尊重される必要があるからです。

最後に

スピリチュアルな癒しとは、私がこれまでの経験を通して感じてきたこととして、ただ神秘的な力や存在を信じることではないと思っています。

それは、傷ついた身体が長く保ってきた緊張が緩み、「護られている」「ここにいていい」「ひとりではない」と感じられるようになるプロセスです。

そしてそれは、安心感を取り戻し、再び生きる希望を感じる出発点となり、特別な場所に限らず、日常の静けさ、人とのふれあい、自然との出会いの中でもそっと芽吹くものです。

もしあなたの内側に、まだ言葉にならない何かがあるとしたら――

どうか、その感覚を大切にしてあげてください。

それは、あなたの内側に静かに根づき、「スピリチュアルなリソース」として、これからを生きる力の源になっていくでしょう。

2004年03月21日作成,2020年02月28日一部改訂,2020年03月20日一部改訂,2025,06,19改訂
文責 カウンセラー池内秀行

参考文献

  • Koenig, H. G., King, D. E., & Carson, V. B. (2012). Handbook of Religion and Health (2nd ed.). Oxford University Press.
  • Lazar, S. W., Kerr, C. E., Wasserman, R. H., et al. (2005). Meditation experience is associated with increased cortical thickness. NeuroReport, 16(17), 1893–1897. https://doi.org/10.1097/01.wnr.0000186598.66243.19
  • Levine, P. A. (2009). In an Unspoken Voice: How the Body Releases Trauma and Restores Goodness. North Atlantic Books.
  • Newberg, A., Pourdehnad, M., Alavi, A., & d’Aquili, E. (2003). Cerebral blood flow during meditative prayer: Preliminary findings and methodological issues. Perceptual and Motor Skills, 97(2), 625–630. https://doi.org/10.2466/pms.2003.97.2.625
  • Park, C. L. (2010). Making sense of the meaning literature: An integrative review of meaning making and its effects on adjustment to stressful life events. Psychological Bulletin, 136(2), 257–301. https://doi.org/10.1037/a0018301
  • Pargament, K. I. (2011). Spiritually Integrated Psychotherapy: Understanding and Addressing the Sacred. Guilford Press.
  • Porges, S. W. (2011). The Polyvagal Theory: Neurophysiological Foundations of Emotions, Attachment, Communication, Self-Regulation. W. W. Norton & Company.
  • Tedeschi, R. G., & Calhoun, L. G. (2004). Posttraumatic growth: Conceptual foundations and empirical evidence. Psychological Inquiry, 15(1), 1–18. https://doi.org/10.1207/s15327965pli1501_01
  • van der Kolk, B. A. (2014). The Body Keeps the Score: Brain, Mind, and Body in the Healing of Trauma. Viking.

Wrote this articleこの記事を書いた人

プロカウンセラー池内秀行

個人・カップル・夫婦・家族・友人同士など、幅広い人間関係やライフステージの悩みに対応する心理カウンセリング・セラピーを提供しています。人間関係の悩み、家庭内の問題、恋愛や夫婦関係に関する悩み、職場でのストレス、自己理解や自己肯定感の向上、不安・抑うつ・トラウマの癒し、生きづらさの解消など、多様なテーマに丁寧に対応いたします。クライアント一人ひとりの背景や課題に応じたオーダーメイドのカウンセリングを大切にし、初めての方でも安心してお話しいただける環境を整えています。海外在住の方や法人のご相談にも対応しています。Zoomなどを用いたオンラインカウンセリングにも対応しており、海外在住の方で日本語によるカウンセリングを必要としている方にも多くご利用いただいています。時差や言語の壁に悩むことなく、安心してご相談いただけます。東京を拠点に、全国および海外からのご相談にも対応しています。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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